2008-01-29

「武士道解題」

僕自身は台湾で生まれただけなのだが、ひょんな事から李登輝氏が日本語を流暢に話される、しかも親日派である事に興味をもったので、読み始めた。

この本は興味をそそる点が幾つかある。

「武士道」と聞くと、その死生観(腹切り)や、ストイック性がついつい思い起こされる。そのようなことから、このような題名が付いている本は、てっきり武士のそのような生き様について延々と記されているかの様に誤解してしまいがちだ。しかし本書は、近代日本の幕開けに活躍した新渡戸稲造が記した「武士道」とは、そのようなことにとどまるものでは無く、名誉と行動を重んずる人としての生き方こそが、人間社会を豊かにできるのだというメッセージが込められている事を教えてくれる。第二次世界大戦終戦まで、日本人として京都大学に学んだ著者は、高い教養とキリスト者としての視点をもって、「生き方」としての指針を示す「武士道」を分かりやすいように解説している。政治家としての経験と、識者としての冷静さは、読むものを自然に引き込む力強さを生み出している。

我々戦争を知らない世代にとっては、東アジア諸国の中では日本は忌み嫌われているのではないかと思ってしまうが、歴史の流れの中で著者を始め多くの台湾人が日本に親近感を持っている事を知り驚いた。そればかりか「自分も日本人として教育を受けた者」として、著者は日本人が必要以上の自己否定、つまり敗戦以来国際社会の中で強いられてきたナショナルアイデンティティーの否定を止め、「人として正しく生きる道」としての「武士道」を指針とすべきであると鼓舞する。これは日本人として育った台湾人である著者の言葉であるからこそ、我々は勇気づけられるものがある。それだから故に、単に「日本人で良かったと思う」のは短絡的であり、更なる歴史の考察とそこから学びとれる英知の実践こそが日本人としての課題である事を突きつけられているという危機感こそが大事な気がする。

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